研究概要 |
本研究は,生体外部に配置された磁石による磁気力制御により,強磁性粒子を結合させた薬剤を患部局所に高濃度に蓄積させる装置を設計・開発することを目的としている.これは磁気力制御薬剤配送システム(MDDS)と考えられ,薬剤の副作用の低減や外科手術の困難な体内深部臓器の治療に貢献できると期待される. 当該年度においては,特に直径5mm程度の初期がんに対する低侵襲治療を目的とし,強磁性針と外部磁場を用いた薬剤の局所集積を目指した.まず,外部印加磁場による模擬毛細血管内の強磁性粒子に作用する力を条件に組み込んだ集積シミュレーションを行い,対向型磁石と超電導バルク磁石を外部磁場中に強磁性針を配置した場合,強磁性針先端への強磁性粒子の局所集積が確認できた.この結果をもとに,強磁性針を挿入した模擬臓器を対向型磁石と超電導バルク磁石の磁場中に配置したモデル実験を行い,実験的にも強磁性針による局所集積が可能であることが示された.さらに,臨床応用に向けて,ラットを用いた動物実験により,強磁性針を用いた肝臓の局所部位への集積について検討した.その結果,ラット肝臓に挿入した強磁性針周辺部において強磁性粒子の集積が確認された,さらに,強磁場を発生させる超電導バルク磁石を用いた動物実験では,遠隔で強磁性粒子の局所的集積が確認できたことから,生体内深部の初期がんに対応したMDDSへの応用が期待できる. 以上の結果から,強磁場と強磁性針により生体内深部の局所部位における磁性薬剤の集積の可能性が示唆された.
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