研究概要 |
当該研究では、排熱を実用温度域(200~500℃)で直接電気エネルギーに変換し排熱再資源化を実現する「環境低負荷型排熱発電モジュールの開発」を主目的としている。具体的には高変換効率(~10%以上)が期待される高効率熱電変換材料Mg_2Si:シリサイド環境半導体を高品質・省プロセスにより合成し、以下に示す当該Mg_2Siによる熱電変換素子モジュールの実用化を目指す。 (1).量産可能な材料合成手法により作製された不純物添加-Mg_2Siの応用物性・工業用原料製造プロセスを開発(2).産業廃棄物シリコン(Si)原料を100%使用したMg_2Siについて、新製法を導入し、材料レベルで変換効率10%超(n形)を指向、(3).Mg_2Siにおいて発電性能および高温耐久性を向上させる不純物元素に関しドーピングの基礎データを蓄積、(4).n形・p形ペア構造Mg2Siもしくはn形-Mg_2Siの単独利用排熱発電モジュールの試作 本年度(2011/H23年度)は上記(1)~(3)に関連した要素技術内容について、以下の項目を実施し知見を得た。 (I).発電性能および高温耐久性を向上させる不純物元素の特性に関する研究開発 (1).従来用いられてきたAl,Bi,Sb以外の新規不純物元素の添加および放電焼結プロセス開発 [成果]:n形Mg_2Siに対する新たな不純物元素として、Co,Sm,Ta,Znを見いだした。Taは電気伝導率の向上によりパワーファクターが向上した。Co,Sm,Znは熱伝導率の低下に寄与のあることが知られた。特にZnは高性能不純物Sbに匹敵する性能を示すことが明らかとなった。 (2).発電モジュールを作製する際に必要なMg_2Siへの金属電極を接合する技術の開発 [成果]:放電焼結法によるMg_2Si焼結時の同時オーミック金属電極作製法により、従来のNiより接触抵抗を低減できるCoSi_2,CrSi_2の新金属電極材料に関してNiバインダー添加により、Mg_2Si-電極間の接触抵抗を大幅に低減できることが知られた。また、Sb添加のMg_2Siでは、Al添加Mg_2Siに比べてMg_2Si-電極間接触抵抗の低抵抗化と高温耐久性の両面で優れることが明らかとなった。 (3).放電焼結法による大口径ペレット作製に関する開発 [成果]:昨年度までに実現したMg_2Siの大口径(~50mm径)焼結ペレット作製では、再現性に問題があったが、本年度、メタルバインダーを開発することで30~50mm径ペレットの再現良く作製できるようになった。さらに、メタルバインダーの添加で、発電特性を向上させることに成功し大口径試料でZT値~1を実現した。
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