研究概要 |
本研究の目的は、スピンを用いた新しい機能を有する電子/光デバイスの創出に向け、半導体への高効率スピン注入を実現する技術を開発するとともに、注入した電子の半導体中におけるスピン依存伝導特性を明らかにすることである。高効率スピン注入のためのアプローチとして、本研究では、スピン偏極率の高いハーフメタル材料として知られているCo系ホイスラー合金とMgOトンネル障壁層からなるスピン注入源を用い、GaAsやSiなどの半導体へのスピン注入を試みる。本年度の主な成果は以下のとおりである。 (1)Co_2MnSi(CMS)/n-GaAs,Co_<50>Fe_<50>(CoFe)/n-GaAsにおけるスピン依存伝導特性の解明 上記接合構造において、トンネル抵抗がCMSやCoFeの磁化方向に依存して変化するトンネル異方性磁気抵抗(TAMR)効果が発現することを見出すとともに、TAMR効果のバイアス電圧依存性、結晶磁気異方性との相関、MgO層挿入効果を実験的に明らかにし、TAMR効果がスピン注入により生じていることを示唆する結果を得た。 (2)スピン注入の電気的検出 CoFe/n-GaAs,CoFe/MgO/n-GaAs,および、CMS/CoFe/n-GaAs接合において、スピン流を直接検出する非局所測定法により、明瞭なスピン注入を実証した。 (3)Ge基板上への高品質なホイスラー合金薄膜の成長 Geへのスピン注入を目指し、Ge基板上にMgO層を介して高品質なCMS薄膜を形成する技術を確立した。
|