研究概要 |
本研究は,銅酸化物高温超伝導体に内在するナノ構造に起因した固有ジョセフソン接合に着目し,同接合超格子と強磁性体からなる積層構造を作製することにより,従来の超伝導素子やスピントロニクス素子にはない機能を探究するとともにそれを利用したデバイス開発を目指すものであり,H21年度は,以下の成果を得た. (1)高品質Bi_2Sr_2CaCu_2O_y(BSCCO)単結晶を用いたCo(100nm)/Au(20nm)/BSCCOハイブリッド構造を電子線並びに光リソグラフィ,イオンエッチング技術により再現性良く作製することに成功した.(2)Co/Au/BSCCOハイブリッド構造において,層に平行な方向から磁場を印加すると,BSCCO内の個々の固有ジョセフソン接合の臨界電流は,4.2Kから臨界温度近傍にわたる広い温度領域でCo膜の磁化特性に対応した磁場依存性を示した.また,そのとき多数の接合の臨界電流が同様な磁場依存性をもつことがわかった.これは,スピン偏極電子が多数の接合にわたりトンネル伝導していることを示唆する結果といえる.(2)Co/Au/BSCCO長方形メサ構造を作製し,その長辺方向並びに長辺と垂直な方向から磁場を印加したところ,異なる臨界電流の磁場依存性が観測され,臨界電流の磁場依存性がCo膜の磁区構造と密接に関係していることを見出した.本研究の成果は,平成22年8月に米国において開催される応用超伝導国際会議において発表する予定である.
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