研究概要 |
本研究は,銅酸化物高温超伝導体に内在するナノ構造に起因した固有ジョセフソン接合に着目し,同接合超格子と強磁性体からなる積層構造を作製することにより,従来の超伝導素子やスピントロニクス素子にはない機能を探究するとともにそれを利用したデバイス開発を目指すものであり,H22年度は77Kにおける固有ジョセフソン接合のスピン伝導特性を中心に評価し,以下の成果を得た. (1)高品質Bi_2Sr_2CaCu_2O_y(BSCCO)単結晶を用いた正方形(面積5×5μm^2)並びに長方形(面積2×13μm^2)のCo(100nm)/Au(20nm)/BSCCOハイブリッド構造を電子線並びに光リソグラフィ,イオンエッチング技術により再現性良く作製することに成功した.(2)正方形試料において,層に平行な方向から磁場を印加すると,BSCCO内の個々の固有ジョセフソン接合の臨界電流の磁場依存性は,磁場の掃引方向に依存してCoの磁気特性に対応したヒステリシスを示した.(3)長方形試料においては,長辺に対し磁場を平行に印加した場合と垂直に印加した場合では異なる臨界電流の磁場依存性を示した.試料と同形状のCoの磁気特性をマイクロマグネティックスシミュレーションにより解析したところ,観測された臨界電流の磁場依存性は,Coの磁化特性及び磁区構造と密接に関連しており,磁壁面積の減少により固有接合の臨界電流が抑圧されることを見出した.この結果は,固有接合におけるスピン伝導を外部磁場で制御で制御可能なことを示唆しており,固有ジョセフソン接合をスピンデバイス応用する上で重要な知見である.
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