本研究では近接して積層成長した量子ドットを用いて、量子ドット間の波動関数の結合を利用した新しいタイプの偏波無依存SOA構造の基本特性を明らかにする。そのためには、(1)サイズ制御、組成制御、歪制御に立脚した多元的な量子ドット結晶成長、(2)光学利得、吸収飽和ダイナミックスなどの基礎物性評価、(3)SOA構造における素子利得、偏光差分利得の評価を実施する必要がある。これら一連の研究により動的偏波制御に影響する量子ドット構造因子を明らかにし、デバイス偏光特性の制御性を実証することが目的である。 平成21年度は新しい独自の積層量子ドットを作製し、基礎光学的特性(発光波長および帯域、偏波特性、吸収飽和ダイナミックス)と偏光光利得の電場制御性について明らかにした。具体的な成果は以下のとおりである。 ●分子線エピタキシーによってGaAs(001)基板にInAs量子ドットを成長した。量子ドットの成長ではサイズ制御、組成制御、歪制御に立脚した多元的な結晶成長を実施した。半球状の量子ドットは単体ではTE利得が大きいので、近接した積層成長により上下の量子ドット波動関数を結合させてTM利得を増強させた。偏波無依存光応答を実現するために量子ドット層で挟まれた中間層の厚さを変えた様々な量子ドットを成長して積層構造が最適化できた。 ●一連の積層量子ドットに対し詳細な基礎光学特性評価を実施した結果、積層した量子ドットから得られる特性を明らかにすることができた。たとえば、フォトルミネッセンスの温度依存性、励起光強度依存性より波動関数(特に電子の波動関数)で結合した量子ドットの電子状態を実証できた。
|