研究概要 |
不純物ドープダイヤモンドは広いバンドギャップ・高いキャリア移動度など半導体として優れた物理特性から、理想的な覧導体材料とされている。本研究開発では,バンドギャップや移動度などの物理特性がダイヤモンドに近いダイヤモンドライクカーボン(DLC)をベースとした不純物半導体成膜技術の構築を目的としている。平成21年度における推進項目と成果を記す。[1]DLC半導体の導電性制御技術の確立(n型DLC半導体のキャリア密度制御) n型DLC半導体の導電性制御技術を構築し、高品質なn型DLC半導体作製のため成膜技術の確立を図った。DLCは窒素をドープすることでn型半導体性を示す。そこで、窒素ドープDLC(NDLC)の化学組成の最適化により、キャリア密度が高く、高いn型半導体特性示すDLC半導体の作製を試みた。さらに、バンドギャップや電気特性等の物理特性を明確にした。 NDLC中のsp^2成分を72%程度とし、3nm程度のサイズのsp^2クラスターを膜中に均一に分散させることで、キャリア密が高く、光電気化学的特性の優れたn型半導体性を示すことが判明した。このNDLCの光学バンドギャップは0.5eV程度であり、価電子帯準位は+0.27Vvs.Ag/AgC1と、酸素発生電位より0.9V程度卑電位に位置することが明らかになった。このため、電極表面の紫外光励起による光電流の測定では、NDLCの価電子帯よりも0.23V卑電位に酸化還元電位を持つRu(NH_3)6^<2-/3+>を溶液中に添加することにより、正孔の溶液側への移動効率が高まり、高い光電流を示した。また、光照射により電極電位が変化することから、電子が伝導帯に励起され、伝導帯中を移動することが確認出来た。したがって、価電子帯と伝導帯が分離した電子構造を持ち、光電気化学デバイスに応用可能なn型DLC半導体を具現化するとに成功した。
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