研究概要 |
不純物ドープダイヤモンドは広いバンドギャップ・高いキャリア移動度など半導体として優れた物理特性から、理想的な半導体材料とされている。本研究開発では,バンドギャップや移動度などの物理特性がダイヤモンドに近いダイヤモンドライクカーボン(DLC)をベースとした不純物半導体成膜技術の構築を目的とした。さらに、高周波デバイス,パワーデバイスに不可欠なダイヤモンドライクカーボン半導体の素子化プロセス技術を確立し、高周波特性・パワー特性においてSicやGaAsを上回る高周波・高出力ダイヤモンドライクカーボンFETの実現を目指すものである。 平成23年度には、前年までに開発したn型DLC半導体のバンドギャップ(0.38eV)をより広いものへ変更することを試みた。光学ギャップ拡張のため、DLC中に、sp^3結合のみを形成するSi原子の添加を試みた。この結果、NドープDLCの光学ギャップを1.7eVとすることに成功した。炭素に対してSiを25%程度添加することにより、キャリア密度、移動度が4.789×1014cm^<-3>、0.2981cm^2V^<-1>s^<-1>のn型半導体となった。この半導体を光電気化学セルに導入し、電気化学的な手法で光電変換デバイスとして機能するn型半導体材料としての評価を行った。11.8Wm^<-2>の出力のXeランプ照射下で、Si添加DLC半導体の電位を貴電位側に捜引すると、7.48V vs. AgAgClにおいて、153μAcm^<-2>の光誘起電流が得られた。この電流から算出される量子収率は4.87%であった。この光誘起電流値は、代表的なn型半導体である酸化チタン微粒子をITO電極上に成膜した電極の示す電流値と同レベルである。したがって、酸化チタン薄膜と同レベルの光電変換効率を示す、Si添加DLC半導体の開発に成功したと結論づけられる。しかしながら、同じ電流値の得られる電位が、酸化チタン0.95Vに対して、7.48Vと非常に高い。これは、作製したsi添加NドープDLC薄膜の導電性が低く、抵抗損失が大きいことによるものであると推測される。今後、さらにキャリア移動度の高い、ワイドギャップDLC半導体の実現に向け、DLCにドープする不純物原子をNからP、あるいはSに変更し、DLC薄膜の体積低効率の低減を図る。
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