1)ボトムゲート型TFT n型半導体をチャネルに用いた場合、ON時にはチャネルと強誘電体の内部に存在する自発分極の方向が同じ向きとなり大きなON電流を得ることができない、OFF時には自発分極の方向が反並行で分極が不安定となり記憶保持特性が劣化することを予想していた。しかしながら、比較的大きなON電流と10000秒以上の記憶保持特性を得ることができ、容易にデバイス動作した。このことを、強誘電体薄膜の強誘電性、チャネルキャリア濃度、膜厚の効果から考察することが出来た。さらに、ゲート長を100nm以下にする等を試みて、単結晶チャネル分極機能型FETの作成プロセスを確立した。 2)トップゲート型TFT n型半導体をチャネルに用いた場合、ON時に自発分極の方向が反並行となり大きなON電流を得ることができる、またOFF時には自発分極の方向が同じ向きになり分極が安定するために、長い記憶保持特性が期待できる。従って、トップゲート構造において最も分極間相互作用を有効に利用できると考えていたが、実験的には大きなON電流を得ることには成功していなかった。本研究によって強誘電体と半導体の界面反応の抑制、強誘電体薄膜の高品質化によって比較的大きなON電流を得ることが出来た。 3)学術的課題 極性界面におけるポテンシャル不連続の緩和機構としては、空間電荷やキャリアの発生、分極反転、バンドベンディングなどが考えられるが、半導体物性のような指導原理は存在しない。今年度は、本トランジスタの等価回路を作製した。チャネル領域にリアクタンス成分が生じているなどの問題点も明らかになった。さらに、ゲート長と強誘電体分極ドメインサイズやチャネル半導体の粒径との関係や強誘電体ドメインの分極方向とチャネルの電子輸送の散乱機構との関係も明らかにした。
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