研究課題
本年度は、マイクロ波プラズマCVD装置を用いて、同位体ダイヤモンドのホモエピタキシャル成長を実施した。ダイヤモンド薄膜を合成するための原料には、水素発生器からの高純度水素ガス及び市販の同位体濃縮された高純度メタンガスを使用した。これらのガスはマスフローコントローラーによって流量制御された状態で、マニホールドによって混合した混合ガス、もしくはガスラインの切り替えによる単独ガスをダイヤモンド合成装置の反応容器に導入する。一方、得られた薄膜の電子状態に関する評価にはカソードルミネッセンス(CL)法、組成純度の評価にラマン散乱分光法、組成分布の評価には二次イオン質量分析法(SIMS)などの評価法を使用した。^<12>C_<1-x>^<13>C_xの混合比を操作して得られた同位体ダイヤモンドのCLスペクトル評価から、バンドギャップに付随した高いエネルギーを持つエキシトンからの発光が観察された。このとき、ダイヤモンド中の^<13>C濃度に対するエキシトンピーク位置は、理論予想より大きい21.5meV/amuのスロープでバンドギャップが高エネルギー側ヘシフトすることがわかった。同位体効果によるバンドギャップ変化は、Si(1meV)やGe(0.36meV)など他の半導体材料と比較して大きく、ダイヤモンド特有の特徴といえる。また、ラマン散乱実験よりダイヤモンドの一次ストークス線のピーク波数の変化から、^<13>Cダイヤモンドの組成比を計算したところ、気相中のガス混合比と結晶内の組成比は高い精度でほぼ一致していることもわかった。バンドエンジニアリングを実現するためには、技術手法の一つである超格子構造を実現する必要がある。本年度は、CVD法による薄膜の膜厚制御限界を調べるために、^<13>Cダイヤモンド中に層幅を変化させた^<12>Cダイヤモンドを挿入したダイヤモンド薄膜の合成実験を実施した。膜厚の制御はあらかじめ成長速度を見積もることにより、合成時間を調整することにより行った。SIMSによる組成分布の結果から設計値1nmに対し、約2nmの半値幅を持つ組成コントラストが観測された。この半値幅は観測装置の分解能に匹敵する。本研究では、次年度検証予定の同位体ダイヤモンド超格子を実現する上で必要となる結晶形成技術の獲得に成功し、同位体効果によるバンドギャップ差を利用した同位体ダイヤモンドによるホモ接合バンドエンジニアリングへの展開に有効な結果を得た。
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