研究概要 |
本研究は,絶縁膜上の非晶質SiのCWグリーンレーザ照射による大結晶グレイン化とSiイオン注入による多重チャネリングを活用した3軸結晶配向制御を組み合わせ,Si単結晶ナノワイヤーを創出する新規技術を開発するものである.ユビキタスネットワーク時代に必須の3次元LSI用薄膜トランジスタ技術の基礎を確立することが目標である.CVDによる多結晶Si膜のグレインへのダブルSiイオン注入実験において,チルト角0度による(110)および45度による(100)のダブルチャネリングによりIn-planeXRDブラッグ角28.4°の(111)面及び47.3。の(220)面のSi膜結晶配向が増強されることを確認した.この知見を踏まえて,さらなるチャネリングの高効率化を目指した.チルト角0度および60度のダブルSiイオン注入を新たに採用することにより両方向とも最も効果的な(110)ダブルチャネリングを発生させ,イオン注入投影面内方向が(111)に規定される可能性があることを実験的に確認した. 電子ビーム露光により100-800nm幅にパターン形成した非晶質Si膜を用いSiナノワイヤーを作成した.CWグリーンレーザ照射により多結晶化配向に端面効果が現れることを見出した.ナノワイヤー幅が200nm以下では側面が(111)に強く規定されるSi結晶グレインが支配的になり,他の結晶面は消滅する傾向を見出した.CWグリーンレーザ結晶化によれば,スキャン方向面が(110),これに垂直な面が(111),表面が(211)に優先配向することが前年に確認されているので,この現象は3軸配向制御の狙いに整合する.ナノワイヤー表面は(211)が支配的であることを基本にし,±30度の<110>方向からのダブルイオン注入が効果的なチャネリングであることを見出した,このダブルチャネリングを施したSiナノワイヤーにおいても端面効果は顕著であり,Siナノワイヤーの幅の縮小とともに高次の結晶面が低減することを確認した.Out-of-plane XRDおよび直行する2方向からのIn-plane XRDにより上記の方法により結晶化したSi膜を解析し,ダブルチャネリングにより規定される結晶核から固相成長する速度は(110)が他の結晶面より速いため,この面方位に向かって約0.5%の圧縮歪が発生することを明らかにした。さらに,試作したSi薄膜トランジスタの電子移動度の面内ばらつき要因を明らかにし,特性ばらつきを低減する構造の有効性を検証した。
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