研究概要 |
本研究は,垂直磁気転写用パターンドマスター媒体に,高垂直磁気異方性及び高飽和磁化を有するCoPt磁性膜を使用することにより,転写特性を飛躍的に向上させ,1テラビット/平方インチを超える記録密度の次世代ハードディスク(HD)へのサーボ信号記録を,高精度,高速,かつ低コストで実現することを目的としている. 本年度の研究実績は以下の通りである. 1.Si基板上にCoPt垂直磁気異方性膜を形成したCoPt垂直マスター媒体を用いて,HDへの転写実験を行った.転写されたHDからの漏れ磁場を磁気力顕微鏡(MFM)により測定し,転写特性を調べた結果,CoPt垂直マスター媒体はFeCoマスター媒体に対して,数dB高い出力を有し最適転写磁場を約1kOe低下できることがわかった.また,サーボパターンとして使用されている種々のパターンに対して転写実験とマイクロマグネティックシミュレーションを行い,それぞれのパターンに対する転写特性を明らかにした.さらに,CoPt膜の磁気特性は,パターン形状によって変化するので,パターン形状と磁気特性との関連についての検討を実施した. 2.CoPt垂直マスター媒体の性能をさらに向上させるため,CoPt/極薄中間層/FeCo/基板なる積層構造を有する媒体を作製し転写実験を行った,この構造のマスター媒体の転写特性に関するマイクロマグネティックシミュレーションも実施した.マスター媒体をこのような構造にすれば,飽和磁場Hsを増大させずに実質的膜厚を増加させる効果が期待できるため,更なる転写特性の改善が見込める.シミュレーション結果は転写特性が改善できることを示したが,実験はまだ途中段階であり,平成23年度まで実験を継続する. 3.1テラビット/平方インチ(Tb/in^2)を超えるHDに対する磁気転写技術の適用可能性を,マイクロマグネティックシミュレーションを用いて検討した.ECC(Exchange Coupled Composite)構造のHDを想定して,トラックピッチ25~50nm,ビット長25nm以下の信号の転写シミュレーションを行った結果,5Tb/in^2程度のHDまで対応可能であることを示すことができた.
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