研究課題
ナノスケール素子では電子やイオン化不純物が少数個になるためにそれらの離散性が顕在化する。しかも、電子や不純物は理論的な取り扱いが極めて困難な長距離クーロン相互作用を及ぼし合うことから、素子特性を正確に予測するためには、離散的な不純物や電子のもつクーロンポテンシャルを正確に考慮したデバイス・シミュレータが必要不可欠になる。当該グループでは、クーロン相互作用をこれまでに無く高精度に導入したバルクでの3次元モンテカルロ・シミュレータを構築した。そこで、シミュレータにナノスケール素子構造を導入し、素子特性の定量的な解析とクーロン相互作用を含めた準弾道輸送の物理機構の解明を行うことを、本研究課題の目的とする。H21年度に実施した研究実施内容は以下の通りである。(1)クーロン相互作用を正確に考慮したバルク3次元モンテカルロ・シミュレータにデバイス構造を導入した。具体的には、次世代Si-MOS構造素子として最も有望視されている、ダブルゲート構造を3次元モンテカルロ・シミュレータに導入した。(2)高濃度にドープされているソース/ドレイン領域での電子間および電子不純物間クーロン相互作用の導入とその正常動作の検証を行った。クーロン相互作用の正確な導入には、(i)集団運動(プラズマ波)の励起、(ii)縮退した電子ガス状態、(iii)ポテンシャル揺らぎに伴ったバンドテール効果を再現する必要がある。これらの効果が再現できることで正当性を検証した。クーロン相互作用を含む3次元モンテカルロ・シミュレーションは、世界的にも本研究グループと米国のIBMグループのみが実行可能である。そこで、今年度研究成果を当該研究分野で最も権威ある米国での国際会議IEDMにおいて報告した。
すべて 2009
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