研究概要 |
本研究では、Si基板上にエピタキシャル成長したGe層を用いて電流注入型1.5μm帯発光素子を実現することを目的とする。最終目標は、Si細線光導波路,Si上Geフォトダイオード,Si-MOSFET等とモノリシック集積したSi光・電子集積回路へ応用することである。 Si上Ge層を用いた電流注入型1.5μm帯発光素子実現には、Geの伝導帯「点へ電子を注入し、価電子帯「点の正孔と再結合させることが重要であり、この実現に向けて、エピタキシャル成長によるヘテロ構造作製と評価、微小光共振器を用いたデバイス応用を進める計画である。 平成21年度は、「n-GaAs/i-Ge/p-Si構造,n-i-n-SixGe1-x/i-Ge/p-Si構造の結晶成長」に力点を置き研究を行った。主な成果は以下のとおりである。また、「注入電流-発光強度特性」に向け、温度可変プローバシステムを購入し、立ち上げを行った。 (1)n-GaAs/i-Ge/p-Si構造の成長と評価 伝導帯下端が「点にあるGaAsを電子注入に用いるため、n-GaAs/i-Ge/p-Si構造の形成を試みた。超高真空化学気相堆積(UHV-CVD)法によりGe/Si構造を成長し、さらにこの構造上に分子線エピタキシ(MBE)法によりGaAsを成長することで、GaAs/Ge/Si構造を作製した。鏡面の成長層が得られ、表面粗さは2nm程度まで低減できた。X線回折による結晶性評価を進めており、今後、反位相境界と呼ばれる欠陥の有無等を明らかにしていく。 (2)n-i-n-SixGe1-x/i-Ge/p-Si構造 n-i-n-SixGe1-x/i-Ge/p-Si構造も合わせて検討した。順バイアスを印加すると、i-SixGe1-x層に高電界領域が形成され、加速・高エネルギー化した「-likeな電子をGeに注入できる可能性があり、Si系材料のみで注入発光の実現が期待できる。高Si組成のSixGe1-x層が望まれる。p-Si(001)ウエハ上に、UHV-CVD法により、SixGe1-x/Ge/SixGe1-x構造の作製を行い、約35%のSi組成のSixGe1-x層をGe上に形成することを可能とした。 今後はドーピングが施された構造の作製を進め、注入発光の実現を目指していく。
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