研究概要 |
本研究では、Si基板上にエピタキシャル成長したGe層を用いて電流注入型1.5μm帯発光素子を実現することを目的とする。最終目標は、Si光導波路,Si上Ge受光器,Si-MOSFET等とモノリシック集積したSi光電子集積回路へ応用することである。Si上Ge層を用いた電流注入型1.5μm帯発光素子の実現には、Geの伝導帯Γ点へ電子を注入し、価電子帯Γ点の正孔と再結合させることが重要である。Γ点に伝導帯下端をもつGaAsを電子注入に用いるn-GaAs/i-Ge/p-Siヘテロ構造の作製と評価、微小光共振器を用いたデバイス応用を進めている。 平成22年度は、主に以下の2点について検討した。 (1)GaAs/Ge/Si構造の作製 Ge/Si構造のUHV-CVD成長、Ge/Si構造上へのGaAs電子注入層のMBE成長を行った。Ge/Si構造の成長には十分な実績があるため、前年度よりGaAs層の成長とX線回折による結晶性評価を中心課題として進めている。今年度はフォトルミネセンス測定によるGaAsの結晶性評価を新たに実施した。GaAsのバンド間遷移による波長870nmの発光を明瞭に観測できた。ただし、波長1umを超える長波長側にも発光が見られるため、バンドギャップ内に結晶欠陥が多く存在していると考えられる。最終構造(n-GaAs/i-Ge/p-Si)では高濃度にSiをドーピングしたn型GaAs層とするが、欠陥がドーピングによる電子を補償するかどうかを明らかにする必要があり、SiドープGaAsの成長を進めている。 (2)エレクトロルミネッセンス(EL)測定システムのセットアップ 電流注入発光の評価に向け、プローブ探針が発光測定用光学系に組み込まれたシステムを立ち上げた。Si上に形成したGe-pin構造に電流注入を行うことにより、1.5μm帯の微弱なEL発光を得ることが可能となっている。n-GaAs/i-Ge/p-Si構造のEL評価に利用できる。
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