研究概要 |
本研究では、Si基板上にエピタキシャル成長したGe層を用いて電流注入型15μm帯発光素子を実現することを目的とする。最終目標は、Si光導波路,Si上Ge受光器,Si-MOSFET等とモノリシック集積したSi光電子集積回路へ応用することである。Si上Ge層を用いた電流注入型1.5μm帯発光素子の実現には、Geの伝導帯Γ点へ電子を注入し、価電子帯Γ点の正孔と再結合させることが重要である。Γ点に伝導帯下端をもつGaAsを電子注入に用いるn-GaAs/i-Ge/p-Siヘテロ構造ダイオードの作製を進めてきた。 平成23年度は、主に以下の項目について検討した。 (1)n-GaAs電子注入層の形成 UHV-CVD法によりp-Si構造上へi-Geを成長した。その後、n型GaAs電子注入層のMBE成長を行った。前年度まではアンドープGaAs層の形成に成功していたが、H23年度は最終構造で必要となるSiドープn型GaAs層の成長を実施し、n-GaAs/i-Ge/p-Si構造の形成に成功した。なお、Si濃度は3×10^<18>cm^<-3>として成長した。これ以上にSi濃度を増加しても、電子濃度が3x10^<18>cm^<-3>程度で飽和することが知られているためである。また、フォトルミネセンス測定により、表面のGaAs層からの発光を確認した。 (2)n-GaAs/i-Ge/p-Siダイオードの作製とエレクトロルミネッセンス(EL)測定 n-GaAs/i-Ge/p-Si構造をダイオードへ加工するため、プロセス(フォトリソグラフィー、エッチング、電極形成など)の設計を行うとともに、フォトリソグラフィー用のマスクを作製した。n-GaAs/i-Ge/p-Siダイオードの作製に遅延が生じてしまったが、現在プロセスを進めており、完成し次第、Geの伝導帯Γ点へ電子を注入する効果を明らかにできるものと考えている。参照試料のGe-pinダイオードについては、1.5μm帯電流注入発光特性の評価は終了している。
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