研究概要 |
本研究では,3年間の最終年度として,以下の実施内容と成果を達成した. まず,(1)キャリア散乱・注入制御の詳細な原理・理論モデル構築と本手法の限界特性解明,として,提案したWell-in-well(WWell)構造のキャリア緩和特性の高速動作への影響解明を進め,より高速動作のための井戸数増加構造及び励起準位利用を提案し,その有効性を数値解析から明らかにした.同時に,提案構造の相対雑音強度を記述する理論検討を進め,基本的特徴を明らかにした.また,半導体光増幅器の,キャリアの蓄積と遷移の条件の関係性を数値解析により明らかにした. 次に,(2)デバイス試作に必要な半導体結晶成長技術の確立,としては,装置トラブルにより高品質化条件の探索ができなかったが,デバイス製作可能な条件においてデバイス用ウェハ成長を行った.最後に,(3)デバイス試作に基づく現象の実験的検証とデバイスの実証,として,実験的に動作特性評価を行った.リッジ構造レーザを試作し,WWell構造が従来量子井戸と遜色ないしきい値電流等の静特性を示すことを確認し,動特性評価としては,相対雑音強度スペクトル特性,および,小信号周波数応答を評価した.結果として,相対雑音強度について,WWell構造では大きな雑音強度が得られる傾向がみられ,基本的理論からは緩和制御が行われている可能性を得たものの,正確な解釈には詳細な理論検討が必要と結論づけた.小信号応答では,発熱により十分な変調帯域が得られていないことを確認し,キャリア緩和の確認および高速変調動作には,発熱の抑制と放熱の改善が必要であることを指摘した. 以上,理論面においては高速化手法を詳細に検討し,実験面においては実際のデバイス製作まで実施した.実験的な現象の検証に至らなかったが,理論検討から適切なデバイス動作条件ではその有効性が確認できるものと信じている.
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