研究概要 |
本研究では,人間の指先に匹敵する鋭敏な触覚機能を有し,かつ,医療診療器具などの局所作業用器具の先端への実装も可能な超小型・高精細のフレキシブル触覚センサの実現を目指している。本年度は人間の高感度な触覚で重要とされる「指紋構造」に着目し,集積回路薄化時に回路裏面にシリコンの指紋の役割をする凹凸構造を形成して,横滑りや3軸方向の力覚検知能を新たに実現した。非線形有限要素解析を用いて柱状指紋構造による横力検出の感度解析を行い,求める仕様に合わせて最適な指紋構造のサイズを求めるとともに,人間の指先と同様に指紋の付け根部分に応力を感知するセンサ要素を配置するデバイス構造を設計した。設計した触覚イメージャーデバイスは,直径8mmの円形ダイアフラム上に8×8のセンサアレイ及び信号処理回路が配置されており,集積回路部と合わせて集積化MEMS技術で製作することに成功した。デバイスを可動ステージに固定した状態でフォースゲージの先端に取り付けたプローブを指紋構造にあて,主軸感度約0.33mV/mN/V,他軸感度5%以下で3軸の力覚検知を実現することができた。また,指紋構造をもちいて滑り検出の実験を行い,滑り出し初期の信号に相当する約300Hzの急峻な信号出力を確認することができた。触覚における指紋の役割と同等な構造を持つ本研究の触覚イメージャーを用いることで,人の指先が有する3方向の触覚(力覚)機能と滑り覚検知能を実現できる見通しが得られた。
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