研究概要 |
本研究では,人間の指先に匹敵する鋭敏な触覚機能を有し,かつ,医療診療器具などの局所作業用器具の先端への実装も可能な超小型・高精細のフレキシブル触覚センサの実現を目指している。 本年度は,引き続き,人間の高感度かつ高機能な皮膚触覚で重要とされる「指紋構造」に相当する微細構造をセンサデバイス上に実現し,その機能と性能の検証を行った。指紋構造としては,昨年度に開発したシリコン基板裏面の加工を利用する方法に代えて,直径480μm,高さ190μmのSU-8感光樹脂構造体を利用している。本構造では,単結晶シリコンに代えてより柔軟かつ摩擦特性に優れたエポキシ系樹脂を用いる事により,センサ表面に平行な成分の入力(X,Y軸入力)をより確実に捉えられるようになった.センサ表面に垂直な方向(Z軸)の加重分布より,対象の表面形状と垂直抗力を計測しながら,柔軟な指紋構造によって水平力を同時に計測することで,対象表面の動摩擦係数の計測が可能となった、また,指紋構造によって表面の滑り出し検知が可能であることから,最大静止摩擦力の算出が可能となった。静止摩擦係数と動摩擦係数の比から対象物の物性,表面状態を推定可能であり,本センサの複合的な触覚検知能力を用いて物体判別を行うことが徐々に可能となりつつある。 また,新たな触覚の検知能力の集積に向けては,冷温検知要素のデバイス実現について最適な手法の選定と測定原理の確立を行っている。本年度においては,冷温検知に向けたデバイス要素の設計について完了した。次年度に向けて,その実現と性能評価を実施してゆく。
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