本年度はダイヤモンドpn接合陰極の長時間動作安定性、劣化特性評価と再活性化に関して研究を行った。冷陰極動作時のpn接合駆動電圧電流、電子捕獲電極(コレクタ)電圧、コレクタ距離を変化させ、100~300℃に陰極を加熱して加速試験的に長時間動作特性を評価した。コレクタ電圧は10V程度で飽和値の90%程度の放出電流を得られることが分かった。コレクタ距離はプローバ測定に伴う電界遮蔽が顕著になる0.25mm程度まで離しても放出電流は5%程度の低下のみであり、極めて低い引き出し電界での駆動が可能であることが分かった。また、放出電流劣化特性に大きな温度依存性はなく、1000時間駆動により得られた放出電流低下の時定数(電流値が1/eとなる時間)は600時間であった。短時間安定性は冷陰極からの放出電流を0.7秒間隔で1分間程度記録し、評価した。その結果、放出電流の変化は±1%以下であり、主にプローブ接触によるダイオード電流不安定に起因するものであった。放出電流とダイオード電流の比である電子放出効率の変化は±0.2%以内であった。当然ながら電界放出型冷陰極に見られるスパイク状の放出電流変化は全く見られない。放出電流低下の原因をオージェ電子分光により評価した結果、ダイヤモンド表面の水素終端状態に大きな変化は見られなかった。劣化の原因は特定できていない。劣化したダイヤモンドpn接合冷陰極の再活性化を水素プラズマにより行った結果、ほぼ完全な回復が可能であることが分かった。放出電子のエネルギーピークは低エネルギー側にシフトし(初期状態に復帰)表面捕獲準位密度の低減を示唆した。
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