本研究では1.1μm帯VCSELを用いた新たな波長帯における高速光伝送技術の開発を目的としている。初年度の平成21年度は、10Gbit/sの直接変調動作が可能な1.1μm帯シングルモード動作VCSELおよび1.1μm帯で低分散・低損失特性を有するフォトニック結晶ファイバを試作し、これらを用いた光伝送実験を行った。また、伝送速度の高速化に重要なピコ秒パルス光源を開発した。 (1)VCSELの直接変調動作による10Gbit/s光伝送実験 横高次モードを-50dB以下に低減させた7.1GHzの応答帯域を有するシングルモード動作VCSELおよび分散値および伝送損失がそれぞれ-19ps/nm/kmおよび1.6dB/kmであるフォトニック結晶ファイバを試作した。そしてこれらの素子を組み合わせ、光変調器や光増幅器を使用しない簡便かつ安価な構成により、伝送速度10Gbit/sの5km光伝送に世界で初めて成功した。 (2)VCSELを用いたピコ秒パルス光源の開発 VCSELの利得スイッチングおよび遅延帰還型光マイクロ波発生技術を用いた2種類のパルス光源を開発した。まず駆動電流のスイッチング動作によりVCSELの緩和振動の主成分のみを抽出し、レーザ外部で最適なチャープ補償を施すことにより繰り返し周波数が10GHz、パルス幅が11.5psであるピコ秒パルス列の生成に成功した。つぎに、VCSELと光ファイバを用いてリング型光マイクロ波共振器を構成し、その共振器内に200mのフォトニック結晶ファイバを挿入することで共振器のQ値を高め、時間ジッターが0.9psである高品質な10GHz光パルス列の生成に成功した。特に、後者のパルス光源はシンセサイザを必要としない自励発振器であり、小型なマイクロ波発振器としての応用が可能である。
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