研究概要 |
平成21年度は,LSIチップ内のシングルエンド伝送方式について,シミュレーションベースに研究を推進した.具体的には,共有・パラレルパス伝送系を対象とした.共有・パラレルバスは,既にLSI内部も利用されているが,これまで伝送線(分布定数回路)としての取り扱いはほとんどなされていない.本研究ではこれを伝送線として取り扱い,セグメント分割伝送線(STL : Segmental Transmission Line)によって伝送線上で発生する信号波形歪みの波形整形(Signal Integrityの向上)を試みた. その結果,STLによって,歪んだ信号波形の論理マージンと遅延時間をそれぞれ2倍以上向上できることがわかった.これは,今後のLSIのオンチップ長距離伝送技術として適用できる可能性がある.一方,立ち上がり/立下り時間の改善効果は小さく,今後の課題となった.また,STLは,周波数変動と配線幅ばらつきについて高いロバストネスを示すことがわかった.具体的には,周波数変動と配線幅ばらつきについて,それぞれ設計値から±10%,±5%の変動があっても波形整形能力に変化はなかった.さらに,クロック信号(繰り返し信号)に対して設計したSTLに対ランダム信号を入力しても波形整形能力を保持できることがわかった. この高ロバスト性を解析すべく,設計したSTLのAC解析を試みた.その結果,STLは設計周波数の近傍周波数領域においてもほぼ理想的なゲインを保持していることがわかってきた.このゲイン特性が高ロバストネスの理由(の一つ)と考えられ,今後,詳細な解析を行う予定である.
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