研究概要 |
平成22年度は,平成21年度に基礎検討を行ったバス・シングルエンド伝送方式に対するセグメント分割伝送線(STL : Segmental Transmission Line)の評価について,その発展展開を中心に研究を行った.バス・シングルエンド伝送は,LSIの実装基板配線はもちろん,LSI内部配線においても重要な基幹配線である.このため,シグナルインテグリティの向上は,特に30GHz級の信号伝送において重要不可欠な技術となる.今年度の研究目的は,バス・シングルエンド伝送についてより具体的な伝送方式においてSTLの効果を試作により定量的に評価することにある. バス・シングルエンド伝送について,2点での波形整形を評価した(バス伝送系においては,複数点での波形整形が重要な課題となる).遺伝的アルゴリズムのパレート解の考えに基づき設計し,試作,評価したところ,2点において同時に,波形整形前の2倍の振幅回復が可能であることがわかった.しかし,波形鈍りが整形できないことが課題となった.今後,教師波形の改良等で本課題を解決する必要がある. クロック信号系だけではなく,ランダム信号系に対する波形整形を試みた.学習方法は,昨年度に提案した手法(孤立波による学習)を用いた.試作,評価の結果,従来配線において全く閉じていたアイダイアグラムをSTLにより開かせることに成功した.一方で,設計時には無かった波形歪みが,アイダイアグラム中に残った.これは,設計時に使用している回路シミュレータの精度によるものと考えられ,今後,設計時に使用する回路シミュレータを変更することが課題となる. 差動伝送系に対するSTLの効果を回路シミュレーションで基本評価し,差動伝送系においてもSTLが有効である見通しを得た.23年度は,この成果を試作によって定量的に評価する予定である.
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