研究概要 |
平成23年度は,差動伝送,およびEnd-to-Epd伝送に対するセグメント分割伝送線(STL:Segmental Transmission Line)の評価を行った.差動伝送とEnd-to-End伝送は,USB,PCI-Express,シリアルATIといった高速ディジタル信号伝送の主流として,現在,高性能PCやサーバで使用されている.今後はLSI内部の伝送方式としても適用が期待されている.差動・End-to-End伝送用SLTは,これまでのバス・シングルエンド伝送に対するSTL設計を拡張して設計を行った.ランダム信号を信号種とし,配線途中に負荷容量を有する系を配線の対象とした(1GHzに対し250MHzスケールアップ設計とした).評価の結果,アイパターン(ランダム信号の信号品質を評価する信号パターン)において,STLは従来配線に比べてアイ開口電圧比3.27倍,アイ開口時間比1.86倍を達成した。この改善比は,従来では使用困難な劣化したディジタル波形を十分利用可能なレベルに整形できることを示しており,現在のプリント基板上の配線はもとより,今後のLSI内部の配線においても高い信号品質改善効果を示すものである. さらに本年度は,これまで高速信号伝送の配線トポロジとして禁止されてきた分岐配線に対してもSTLを適用し,その効果を試作検証した(分岐配線は,分岐点で大きな反射波歪が発生するため高速信号への適用はCAD規則として禁止されてきた).クロック信号を信号種とし,分岐配線を持つバス・シングルエンド伝送を対象系としてSTLを設計し,従来配線との試作評価比較を行った.その結果,STLは従来配線に対して4.2~3.8倍の論理マージン改善比を実現した.この結果は,分岐配線においても高速信号伝送が可能であることを示しており,今後,プリント基板上の配線やLSI内配線への適用が期待できる結果である.
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