研究概要 |
本年度は,QoE向上に関して,主として,次の5種類の研究を実施した. まず,第1に,QoEベースビデオ出力方式SCSについて,昨年度に提案した2種類の閾値選択方式(表参照方式,ユーザ選択方式)を,多様なコンテンツに適用し,有効な参照表とユーザ選択のインタフェースの作成を行った.また,時変トラヒックにも有効に対処できることを明らかにした. 第2に,QoE保証方式GPSQをインタラクティブ通信に拡張し(インタラクティブGPSQ),個々のユーザがQoEを最大にするようなカスタム化法を提案した.主観評価実験によりその有効性を検証した.第3に,無線アクセスネットワークにおけるQoE向上/保証の研究を取り上げた.IEEE 802.11e HCCAにおけるクロスレイヤパケットスケジューリング方式の一つとして,送信側MAC層でのビデオフレームスキッピングなどのQoE向上方式を導入して,有効性を定量的に立証した.また,IEEE802.16も取り上げた. 第4に,多視点ビデオ・音声(MVV-A)システムによるQoE向上の研究を行った.MVV-AシステムにおけるQoEは,多様な要因に依存する.昨年度に構築したIPネットワーク上でのMVV-Aシステムを用いて,QoEに大きな影響を及ぼす要因を特定し,その定量的評価を試みた.特に,コンテンツ,ユーザインタフェース,カメラ配置がQoEに及ぼす影響を,SD法により多次元的に評価した. 第5に,更なるQoE向上ために,音声・ビデオに加えて力覚メディアを新たに取り上げた。これら3メディアによる三感インタラクティブIP通信を対象として,QoE向上方式としてメディア適応型メディア内同期制御方式を提案し,QoEの多次元評価を行った.その結果,提案方式は従来方式よりも高いQoEを達成できることを示した.
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