研究概要 |
本年度に行った研究を要約すると次のようになる. 1. 最適な量子一括復号による通信路行列公式の完成 本研究で目指す,現実的な(有限の符号長)符号化・復号化による量子通信の特性を詳細に調べることに対し,通信路行列の計算が計算量的に困難であることは,大きな問題である.特に,いわゆるSquare-root measurementを最適とする群共変的な符号に対する通信路行列を効率的に計算することが重要である. 今年度,10年来の課題であった,一般の群共変的符号に対する通信路行列公式を完成させることに成功した.今後,広義の群共変に関する考察や公式の適用研究など,新たなステップに進むことができる. 2. 広帯域量子通信路容量に関するより詳細な考察 MITのグループによる広帯域量子通信路容量は,絶対零度の下で無限の周波数帯域を用いた場合で,現実のものとは言えない(有限で達成できないなら未来永劫達成されない).このため,周波数の下限を熱雑音の影響が少なくなる遠赤外領域,上限を遠紫外領域とすることで,周波数帯域を無限ではなく1000THzオーダーの有限のものとして,MITグループより現実的な広帯域量子通信路容量を示してきた.受信エネルギーが小さいとき,両者はほぼ一致する.1000THzでも現状の技術の延長線上にあるとは言い切れない超広帯域であるため,徐々に帯域幅を狭めて特性を調べたところ,受信エネルギーが小さいところと大きいところでは,帯域を制限する影響として,低周波側をカットする影響と高周波側をカットする影響に違いがあることが明らかとなった.
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