研究課題/領域番号 |
21360191
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川上 浩司 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (90214600)
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研究分担者 |
須藤 秀紹 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90352525)
半田 久志 近畿大学, 理工学部, 准教授 (60304333)
小北 麻記子 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (00389694)
谷口 忠大 立命館大学, 情報理工学部, 准教授 (80512251)
平岡 敏洋 京都大学, 情報学研究科, 助教 (30311749)
塩瀬 隆之 京都大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (90332759)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 不便益 / システムデザイン / 人間機械系 / ヒューマンインタフェース |
研究概要 |
本研究課題の目的は,便利の追求で見過ごされてきたが実は人間-機械系においては本質的に重要であった事項を整理し直し,各種デザインの実践を通して,新たな設計指針あるいは方向性を明らかにすることである.これに向けたH24年度の成果を以下に示す. 【総論(川上)】本研究課題の前半に得られた知見や事例をまとめてH23年度に出版した一般啓蒙書を受けて,H24年度には計測自動制御学会の学会誌で特集を組むとともに,経営工学・人工知能など異なるいくつかの研究分野の視点から本研究課題を捉え直し,解説記事として各学会の学会誌に寄稿した. 【場のメカニズムデザイン(谷口)】コミュニケーション場のメカニズムデザインをテーマとした研究に関しては,昨年度までに提案したビブリオバトルの実践をH24年度も継続しながら,その機能や設計の妥当性を検討した.さらには,ワークショップ開催などの普及活動につとめた結果,45都道府県での開催が確認されている. 【意匠デザイン(小北)】身体に障害があるという不便に対しては,失われた便利を提供することは難しい.そこで,義手を題材として,不便益研究のこれまでの知見をもとに,便利さ(機能)ではなく使いたくなる気持ちを高める要素についてを考察し,主に学会発表を行うことによって検討を進めた. 【情報伝達系デザイン(須藤)】H23年度までに集積した知見に基づき,H24年度には「物理的な場所の共有を前提としたコミュニケーションシステム:RSNS(real social network system)」を提案し,そのアプリケーションを試作した.これを用いて最終年度には実験的検証を実施する. 【インタフェースデザイン(平岡)】H23年度から加えたインタフェースデザインに関しては,H24年度は安全運転や低燃費運転をモチベートする乗用車の運転席を対象にした実験を実施し、良好な結果を得ている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【総論】理論的基礎に関しては,本研究課題の目的と意義をまとめた総説論文は論文賞を受賞し,H23年には本研究課題の前半に得られた知見や事例を一般啓蒙書として出版し,H24年度には経営工学など当初想定していなかった研究分野からも解説を依頼されて執筆した.これらの活動を踏まえて,最終年度に数理モデルを構築する下地はできあがっていると判断して良い. 【応用】研究分担者が各人の研究領域で実践している研究は,進捗に差はあるものの,全体としてみると概ね当初予定通りの進展が見られる.たとえば場のメカニズムデザインにおける実践は,当初計画からターゲットを変更したものの,その実践は,メディアでの掲載回数は,2012年から現在までで新聞90回・テレビ17回・ラジオ15回・雑誌その他13回を数えている.また,新たに発想支援手法としての展開も開始しており,発想実験で出たアイデアがメディアに取り上げられたのはテレビ1回,ラジオ1回,新聞3回,雑誌1回を数える.これにより,分かりやすい事例を通して当研究課題の目的が一般にも浸透しつつある.
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今後の研究の推進方策 |
当研究課題最終年度のH25には,当初の予定通りに研究を推進する.すなわち,今までに得られた研究成果をまとめて学術雑誌などで報告すること,ならびに全体のアウトプットとなるシステム論の数理的モデルの構築に注力する. 【成果報告】Webやfacebookを利用した逐次成果報告を継続するとともに,まとまった知見は各研究分担者が個別に学術雑誌等で報告する.また,学術会議などで研究分担者ならびに関連研究を実施している研究者が集い,研究報告や議論をするための場としてセッションをオーガナイズする(第57回システム制御情報学会研究発表講演会など). 【理論化】昨年度までに各フィールドで得られた知見に基づいて,数理モデルを構築する.現段階では,不便益の分類・特徴・設計プロセスへの適用方法という形式が想定される. 【実践】実践のフィールドとして,当初予定のインクルーシブデザインは研究分担者の変更に伴って日用品のデザインとインタフェースデザインに変更したが,これ以外の情報伝達系設計と制度設計は当初予定通りに維持する.制度設計に関しては,参加者規模を拡大した場合の実践調査を最終年度に予定するが,それ以前に得られた知見は先の数理モデルに組み込む.情報伝達系設計は,昨年度に試作したシステムを実験的検証の場に移す.日用品ならびにインタフェースデザインに関しては,昨年度までに得られた知見の確認を進めるが,この段階での知見の大幅な変更は必要ないと想定している.
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