生物系の時間発展システムに物理的なフィードバックを与える複合システムを構築し、「潜在的に方向性をもった時間発展揺らぎ」を研究すべく、本年度は光-微生物フィードバックのシミュレーションと実験を進めた。 昨年度開発したフィードバックシミュレーションプログラムを修正し、微生物が示す光反応の感受性や耐性などに個体差がある場合について、どのような効果が現れるかを調べた。また、4都市巡回セールスマン問題において、都市間の距離が変わった場合の影響について調べた。さらに都市数を8に増やした場合、計算効率や得られる解の分布がどのように変化するのかを分析した。これとは別に、微生物の行動をノイズオシレータとみなし、光反応をノイズオシレータの振動強度に対応させた場合のシミュレーションを行った。ノイズオシレータに基づいたフィードバック計算がうまく進行するための条件を解析し、状態変数を規格化する経験式を確立した。 正立型光学顕微鏡をベースとして昨年度に構築した「光-微生物フィードバックシステム」において、微生物を閉じ込めるパターン構造を作成し、閉じ込めの効率と長時間培養中の変化を調べた。閉じ込めた微生物にさまざまな条件の光を照射し、微生物の示す光反応を時間分解で解析した。その結果に基づき、フィードバック実験における最適な光強度を明らかにした。 2次元培養している微生物の活動度と行動様式をビデオ観察データから数値化する方法を検討した。差分データから微生物の動きの軌跡を抽出し、その軌跡のエリア積分あるいは、軌跡の重なりのエリア積分によって数値化を行った場合、光照射によってその数値がどのように変化するかを実験によって明らかにし、フィードバック実験への適用した。
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