生物系の時間発展システムに物理的なフィードバックを与える複合システムを構築し、「潜在的に方向性をもった時間発展揺らぎ」を研究すべく、本年度は微生物2次元培養系におけるフィードバック制御・アナログニューロコンピューティング・2つの独立培養系間の微生物の相互作用の3項目を研究した。 青色光の照射強度と微生物ユーグレナの反応の関係を調べた。周期的に光をオンオフした場合の過渡特性を計測し、光強度との関連を明らかにした。さらにビデオ解析を行うことで、過渡特性の原因となっているユーグレナの反応を個体レベルで分析した。ユーグレナの光反応には大きな個体差があり、反応が3つのタイプに分類され、光強度が大きくなるとフリーズするタイプの反応が多くなることが分かった。実験を繰り返すとフリーズ反応が減り、光への適応が進行することが分かった。細胞密度を制御する実験において積分要素を導入することによりオフセットのない密度制御が達成できた。 ニューロコンピューティングにおいて、連続的な光強度をとるアナログフィードバックを導入した実験を行った。ユーグレナの光強度に対する反応には分布があるので、アナログフィードバックによりより柔軟な解探索が行えることがわかった。出力変数はシグモイド関数によって0から1の間のアナログ量に変換した。デジタルフィードバックとは異なり、中間値をとるためにより広い範囲の解探索が達成できた。 2セットの「光-微生物フィードバックシステム」の間でデータを交換し、相手側の状態に応じた光照射を行うことで独立した培養系の間に相互作用を人工的に導入した。2つの独立した培養系に対して、それぞれ異なるロジックで光照射を行った場合に、双方が満足する解に到達できることがわかった。さらに相手側が密集しているところを避けるような光フィードバックを行うと人工的な棲み分け現象が起こることがわかった。
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