石油価格の高騰を受け、北アメリカやメキシコではこれまで採算性が悪く利益の出なかった油井が見直される状況にあり、新規油井開発のための効率のよい地下資源探査技術の開発は急を要する。SQUID磁気センサは低周波において超高感度特性を示すので、これを用いて石油やガスなどの天然地下資源を探査するための低磁場NMR(核磁気共鳴)装置を開発することを目的とした。この方式では分極磁場を増大させることが課題となる。 そこでHTS-rf-SQUID磁気センサ、常伝導磁束トランス、静磁場コイル、磁場補償コイル、永久磁石、サンプル移動機構、ACコイル、などから構成されるSQUID地磁気NMRシステムを試作・開発した。磁束トランスのインプットコイル、ピックアップコイルの巻き数の最適値を計算によって求め、それをベースとして実際にいくつかの組み合わせのコイルを作製した。それらの結果より、作製した磁束トランスの中でS/N(信号雑音比)が最も高いものをシステムに組み込んだ。ピックアップコイルには環境ノイズを減少させるため差動形を採用した。そのシステムを用いて、磁気シールドルーム内で^1HプロトンNMR信号を計測した。静磁場コイルで地磁気レベル(約45μT)の強度を持つ静磁場を印加し、1923.5H名にプロトン^1Hのピーク信号が確認できた。このときのSN比は約7以上で実用に耐えるものであった。これにより、地磁気と同レベルの磁場下で、磁束トランスを用いてもプロトン^1HのNMR信号が得られることを明らかにした。
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