研究概要 |
本年度は各項目に関して下記の成果を得た. (A)情報圧縮(量子化入力に基づく超解像制御) フィードバック制御系におけるランダムディザ量子化器と非線形動的量子化器の構成法の研究を行った. 前者に関しては,量子化器を含まない理想的なシステムのインパルス応答行列がすべて同じ符号である場合,一様確率分布によるランダムディザ量子化器が最適であることを証明した. 後者に関しては,入力がアファインな非線形システムに対しても,線形系の場合(Azuma & Sugie, Automatica 08)と同様にして,最適な動的量子化器を解析的に導出できることを明らかにした. (B)情報復元(量子化出力に基づく超解像制御) 量子化出力から高解像度の出力を再構成する手法に関しては,カルマンフィルター等との比較を行い,その有効性を検証した.また,ここでは対象システムのモデルの精度が重要な役割を果たすため,量子化出力からシステムを高精度に同定する手法についても検討し,粒子群最適化の手法を用いることにより,より高精度なモデルが得られる可能性があることを数値例により確認した. (C)ソフトスペック制御 ここでは,目標状態・目標軌道の厳密な達成を求める代わりに性能仕様を緩和することによって「低解像度の信号による目標の緩い達成」を目的としており,前年度まではその可能性を主に移動ロボットシステムの実機実験を通して検証してきた. 本年度は,非線形振動子に代表される少数の周期信号発生機構(オシレータ)の組合せからなるコントローラを上記移動ロボットに対して構成し,単純な構造によって目標を緩く達成する周期信号を生成可能であることを示した.また,振動子の結合パラメータに対象の状態変数を反映させることによってフィードバック制御を実現している-
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今後の研究の推進方策 |
情報圧縮に関して,本年度は,特定のクラスのシステムに対して,最適な量子化器の導出に成功したが,この結果の本質部分を抽出し一般化するように研究を推進する. また,情報復元に関しては,量子化出力からの出力情報再構成手法について,モデル化誤差の影響を含めて,他手法との比較をおこなう. ソフトスペック制御に関しては,その実現のためには制御対象および環境から得られるセンサ信号をどのようにフィードバックすべきかという制御系の構造の検討と同時に,特に外乱に対するロバスト性の検証を行う.
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