研究概要 |
本研究では,セメント系硬化体を水和物の集合体とみなし,個々の水和物の性質を積算していくことによって全体の性能を評価することを最終目的とし,初年度である平成21年度に引き続き,i)水和モデルの構築,ii)水和物の諸性質の測定,iii)水和物の性質とセメント硬化体の物質移動性の関係のモデル化について基礎的な検討を行った. その結果,次のような成果を得た. (1)合成C-S-Hおよび種々の材料・配合の水和試料を用いてC-S-Hの組成および密度と比表面積を測定した.その結果,C-S-HのH/S比は,材料・配合に依らずC/S比に比例することを明らかした.さらに密度および比表面積も材料・配合に依らず,C/S比と比例関係にあることを明らかにした. (2)酸素の拡散係数により空隙特性である屈曲度を求め,C/S比によるC-S-Hの物理的性質が屈曲度に及ぼす影響について検討した.その結果,空隙構造の変化をC/S比ごとのC-S-H比表面積の違いにより説明することが可能であることを示した. また,塩化物イオン実効拡散係数から求めた屈曲度と酸素拡散における屈曲度の比較を行った結果,細孔直径6nm以下の空隙量が多いほど,塩化物イオン拡散における屈曲度と酸素拡散における屈曲度の比,即ち塩化物イオン拡散経路の延長度が増大する傾向を示すことを明らかにした.
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