研究概要 |
本年度は,(1) 塩害を受けたコンクリート部材に対して非破壊試験(NDT)を行い,この結果をインプットデータとする構造解析(FEM)手法により,任意の時点における部材の耐力を推定する手法についての検討を行なうとともに,(2) 統計的手法を援用することにより将来の部材の耐力を定量的に予測する手法についての検討を試みた。以下に得られた成果の概略を示す。 (1) NDTとFEMを融合したコンクリート部材耐力の推定手法 電食試験によりRCはり供試体に腐食ひび割れを生じさせた部材の曲げ耐力を推定する手法として,目視によるひび割れ幅の最大値の測定結果から終局強度理論に基づく計算により曲げ耐力を推定する手法(手法I),ひび割れ部ではひび割れ幅の測定を,ひび割れ部以外では分極抵抗法を実施し,各非破壊試験結果に基づきFEM解析により曲げ耐力を推定する手法(手法II)をそれぞれ適用した。その結果,いずれの手法においても,曲げ耐力をおおむね推定できるものの,NDTとFEMを融合した手法IIの方が,より高い確度で推定できることを明らかにした。 (2) 部材耐力の予測手法 部材耐力の予測を行なうために使用するフラジリティカーブの統計量の問題点を整理・改善し,建設後30年が経過した桟橋(RCスラブ)が設置されている環境条件に対応した劣化曲線の導出ならびに30年後の耐力の推定(予測)を行なった。導出結果の確からしさを検証するため,桟橋から切り出したRCスラブにおいて曲げ耐力を載荷試験により実測した既往の研究データとの比較も行なった。その結果,劣化曲線から求めた30年後の耐力は,実際の曲げ耐力とおおむね一致することが明らかとなった。
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