研究概要 |
本年度は,1.塩害を受けたコンクリート部材を模擬した供試体に対して非破壊試験(NDT)を行い,この結果を入力データとした構造解析(FEM)により,NDT実施時点の供試体の耐力を推定する手法の高度化を行うとともに,2.飛沫帯に設置された実際のコンクリート部材を対象に,統計的手法により将来の部材耐力を予測する手法およびその妥当性の検証を行った。以下に得られた成果の概要をそれぞれ示す。 1. NDTとFEMを併用したコンクリート部材耐力の推定手法の高度化 電食試験によりかぶりコンクリート表面に腐食ひび割れを生じさせたRCはり供試体を対象に,「手法I:クラックスケールで測定したひび割れ幅の最大値から鉄筋径を推定後,終局強度理論から曲げ耐力を推定」と「手法II:ひび割れ箇所ではその測定,ひび割れの無い箇所では分極抵抗法による計測を実施し,それぞれの結果から鉄筋径を推定し,それらの結果を入力データとしたFEMにより曲げ耐力を推定」をそれぞれ適用した。その結果,いずれの手法においても曲げ耐力を概ね推定できるものの,手法Iよりも手法IIで推定した曲げ耐力の方が,載荷試験で実測した曲げ耐力に近い値となった。したがって,曲げ耐力を適確に推定するためには,手法IIのように,鉄筋腐食の不均一性を考慮することが重要である。 2. 統計的手法によるコンクリート部材耐力の予測手法とその妥当性の検証 飛沫帯にあるRCスラブを対象として,部材諸元および部材の設置環境条件と,既往の研究や実構造物の調査結果に基づき設定した確率分布およびその統計量から,モンテカルロ法により供用年数と曲げ耐力との関係(劣化曲線)を解析的に導出した。さらに,対象とした部材において載荷試験を行い曲げ耐力を実測した既往の研究成果を用いて,導出した劣化曲線の妥当性についての検証も併せて行った。その結果,本手法により推定した曲げ耐力は,実測値と比較的良い一致を示すことが明らかとなった。
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