本研究は即発γ線分析によりコンクリート内部の塩化物イオンの濃度分布を測定する技術を、現場での非破壊計測方法に発展させることが目的である。現場計測を可能とするため、中性子水分計で利用されている移動可能な中性子線源であるカリフォルニウムを用いて、コンクリート内部の塩化物イオンの濃度分布の測定について検討する。カリフォルニウムからあらゆる方向に出ている中性子を原子炉からの中性子ビームと同じように所定の測定位置に照射する方法を検討する。また、カリフォルニウムでは半減期で知られているように経時変化があるので、その影響を検討する。さらに、即発γ線のエネルギースペクトルを得るためには一般にGe検出器が用いられるが、現場計測での取り扱いやすさとGe検出器に比べて安価であることを考慮して、エネルギー分解能は劣るがNaI検出器を用いた即発γ線分析を行い、耐久性診断に利用できる精度を確保して塩化物イオンの濃度分布の測定をする方法を検討する。本年度は中性子ビームを用いて、測定対象物の表面にダミー試料を取り付けて一枚ごと外して即発γ線を計測することにより、コンクリート内部の塩化物イオン濃度の表面からの深さ方向の分布を非破壊で測定することができた。ただし、測定精度にばらつきがあり、精度向上の検討が必要である。また、中性子ビームでなく現場での計測を考慮して水分計などで使用されているカリフォルニウムを用いて塩化物イオンの測定を試みたが、明確な即発γ線が計測できなかった。カリフォルニウムを用いた即発γ線の計測については次年度以降の課題である。従って、次年度はNaI検出器を用いた即発γ線分析を予定していたが、変更してカリフォルニウムとGe検出器での検討を行うこととした。
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