土木構造物の効率的かつ安全な整備のために活用されている、連続繊維補強材および連続繊維シート補強材の実際の適用条件における長期耐久性にはまだ未解明の部分が多いことから、本課題ではこれらの材料の実環境に暴露された試験供試体を回収・調査し、その劣化特性や耐久性(劣化因子やメカニズム、劣化速度など)を解明しようとするものである。 当該年度には、1990年頃から海洋技術総合研究施設(駿河湾沖の海上施設)およびつくば(土木研究所構内)で暴露試験に供されていた、連続繊維補強材の供試体数十体を回収した。これらの供試体のうち非緊張状態で暴露されていたものについて、その劣化状態を、外観調査、電子顕微鏡観察、赤外線顕微鏡などで評価し、これらの評価方法が有効であることを確認した。今後は緊張状態で暴露されたものも含めて本格的な劣化評価を実施し、実環境における耐久性を明らかにする予定である。 また、連続繊維シート補強材についてはつくば、沖縄、シェルブルックにおいて暴露試験に供されていた材齢10年の供試体数十体を回収し、これらについて力学的物性試験の変化性状を調査した。この結果、補強繊維の物性の影響を強く受ける、補強繊維方向の力学物性は、10年間の暴露後にも殆ど低下を示さないのに対して、マトリックス樹脂や樹脂と繊維との付着特性の影響が強く表れる面内せん断特性は、物性変化が比較的早期に明確に表れることが分かった。また、表面塗装の保護効果は、試験に供した供試体については殆ど無いことも明らかとなった。今後は化学的な分析も実施し、劣化因子や機構についての検討も含めた評価を実施する計画である。また、比較的近年開発された、新しいタイプの連続繊維補強シートについて、計画通りに供試体製作・初期物性の測定とともに暴露試験を開始し、今後の耐久性評価に託すこととした。
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