土木構造物の効率的かつ安全な整備のために活用されている、連続繊維補強材および連続繊維シート補強材の実際の適用条件における長期耐久性にはまだ未解明の部分が多いことから、本課題ではこれらの材料の実環境に暴露された試験供試体を回収・調査し、その劣化特性や耐久性(劣化因子やメカニズム、劣化速度など)を解明しようとするものである。 連続繊維補強材については、21年度に回収された、海洋技術総合研究施設(駿河湾沖の海上施設)およびつくば(土木研究所構内)において15~20年間暴露試験に供された、緊張状態で暴露された供試体について、緊張開放を実施すると共に、残存緊張力の測定を行った。続いて、外観調査により表面の劣化状況を記録するともに、引張試験による残存力学物性の調査を実施した。 連続繊維シート補強材については、つくば、沖縄、シェルブルックにおいて、10年間暴露試験後に回収され、21年度に物性試験を実施した供試体について、断面の赤外線顕微鏡による劣化観察・分析を実施した。この結果、材料の化学的な劣化が表面近傍で認められるものの、内部には健全な部分が多い場合が多いことが分かった。また、新たに暴露試験を開始した、比較的近年開発された連続繊維シート補強材(アラミド繊維シート、PMMA樹脂をマトリックス樹脂とする炭素繊維シートなど)について、1年間暴露後の積層板供試体の物性試験を実施した。さらにこれらの付着耐久性を評価するための供試体製作の準備を行うとともに暴露試験実施に必要な暴露架台を製作・設置した。 今後は回収供試体の化学的な分析をさらに進めて新たなデータを得ると共に、これらのデータを整理・解析することにより、連続繊維補強材・シート補強材の、劣化のメカニズム、因子など、実環境における耐久性の詳細を解明する予定である。
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