研究概要 |
本研究は,コンクリート巻立て補強された既設鉄筋コンクリート(以下RC)橋脚が地震を受けた場合,構造物全体系の地震応答性状,損傷位置とその程度を明らかにするため,地盤-基礎-橋脚-上部工から成る構造物全体系に対してサブストラクチャ仮動的実験を行った。実験部材は,直径が300mmの実PHC杭を2本施工して,これをフーチングにより一体とする構造物である。実験により得られた知見を以下に記す。 1)旧設計基準の既設RC橋脚に対してRC巻き立て補強をし,曲げ降伏水平耐力が0.6W_1から1.2W_1に向上すると仮定したところ,強地震動下において橋脚は線形応答を示したが,基礎水平方向では,最大応答変位が終局変位の72%,最大応答曲率が終局曲率を超えるなど,大きな塑性変形を示した。これらのことから,曲げ耐力の向上を伴う耐震補強工法を橋脚に適した場合,橋脚の損傷は抑制される一方,基礎に大きな損傷が生じることが明らかとなった。 2)補強橋脚に対する基礎の終局耐力比が,道路橋示方書に規定されている値以上である場合にも,強地震動下において基礎に大きな塑性変形,損傷が確認されたため,橋脚補強による曲げ耐力の向上が,基礎の降伏もしくは終局に繋がる可能性は十分にあることが確認された。 3)曲げ耐力の向上を伴う耐震補強工法を橋脚に適用し,橋脚から基礎に損傷が移行するような場合でも,地盤改良と基礎の耐震補強により,損傷が大幅に改善された。ただし,基礎補強の程度によっては,強地震下で再び橋脚に大きな損傷が生じてしまう可能性があるため,構造物全体系で安全となるような基礎補強の程度を定量的に評価することが今後の課題である。
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