研究概要 |
本研究は非接触超音波法に関する基礎研究を進め,それを用いた新しいモニタリング戦略を構築するものである.平成22年度は,非接触非破壊検査法の一つである空気超音波の数値解析ならびに基礎実験を行った. 数値解析においては,空気-固体連成問題を解析するためのLubichによって提案されている演算子積分時間領域境界要素法を開発した.ただし,本研究では解の表現をフーリエ像空間で表す改良型演算子法を用いた.これによって,空気と固体の境界条件を容易に満足させることができた,また,空気と固体はインピーダンスの差が大きいことから解くべき方程式の不安定性が懸念されたが,改良型演算子法を用いることによって特段の問題は生じなかった. 開発した手法を用いて空気領域から固体(コンクリート)への超音波入射の解析を行った結果,固体におけるP波が全反射する臨界角を超えた入射角(約6°)で最も効率よくS波が固体内に入射され,空洞や介在物などの散乱現象が顕著に発生することがわかった.また,固体から空気領域への表面漏洩波も確認することができた. 実験では,内部に鉄筋と空洞を有するモルタル供試体を作成し,二個の空気超音波探触子を供試体表面に沿って移動させながら複数の点において,二探触子によるピッチキャッチ法で波形を計測した.空気超音波の広がりを考慮した開口合成法を用いることにより,供試体内部の鉄筋と空洞の画像化に成功した.ただし,鉄筋による散乱波は小さく,空洞に比べて得られた画像は不鮮明なものとなった.今後,波形処理を併用した画像の高精度化について検討する予定である.
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