研究課題
本研究は、Eディフェンス実大橋脚震動実験から得られた塑性変形メカニズムを模型の寸法効果の観点から検討し、これを新しい塑性ヒンジメカニズムとして開発すると同時に、この考え方に基づいて高じん性橋脚の開発を図ろうとするものである。平成22年度には、平成21年度の載荷実験を補完するため、2体の縮小模型に対する応答載荷実験を行い、寸法効果並びの塑性変形メカニズムの詳細な検討を実施した。縮小模型の基本的考え方は軸方向鉄筋、帯鉄筋の径だけでなく最大骨材寸法もできるだけ縮小率に応じて低下させ、実大橋脚の正確な縮小模型を製作しようとするものである。しかし、正確な縮小模型を製作することはなかなか容易ではなく、例えば、縮小模型に使用可能な細径の異形鉄筋の形状(模様)が実大橋脚の異形鉄筋とは異なることから、単純に鉄筋率を求めることが困難である。平成22年度には単位長さ当たりの平均的な鉄筋重量から求めた径に基づいて鉄筋量を求めていた(S-2模型)が、今年度は最小断面位置での断面積を用いて(S-3模型)縮小模型を製作した。軸方向鉄筋比は実大橋脚が2.07%であるのに対して、S-2模型では2.37%、S-3模型では2.08%となる。代表的断層近傍地震動であるJR鷹取駅記録を用いた応答載荷実験の結果、軸方向鉄筋比を実大橋脚とほぼ一致させることにより、縮小模型の曲げ耐力は実大橋脚の曲げ耐力をほぼ再現することができるが、実大橋脚に比較して縮小模型の方がかぶりコンクリートの剥落や軸方向鉄筋の座屈、コアコンクリートの圧壊が少なく、両者の塑性変形の進展には違いがあることが明らかとなった。今回の実験では、橋脚が明らかな耐力低下を引き起こすレベルまでは地震動を作用させていないが、より損傷度の高いレベルまで地震動を作用させた場合には、さらに縮小模型と実大橋脚の塑性変形特性には大きな差が生じると考えられる。
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土木学会論文集A
巻: Vol.66, No.1 ページ: 324-343