研究課題
本研究の目的は、疲労強度向上効果が非常に大きいことが明らかになりつつあるレーザピーニングを、鋼橋の疲労き裂発生防止手法および疲労寿命向上手法として実用化するため、より実用性の高いノズル型レーザピーニング装置を開発し、その効果を部材試験体により実証することである。レーザピーニングが疲労き裂の発生防止に適用できれば、鋼橋をはじめとした鋼構造物の長寿命化が可能になると考える。これまでのレーザピーニングの施工は、水中でレーザ照射を行ってきた。しかし、鋼構造物は大型であるため水槽内にいれることは困難である。そこで昨年度、ノズル型レーザピーニング照射ヘッドを開発した。本年度は開発した照射ヘッドの適用性を検討するため、種々の溶接試験片で試し打ちを行った。その結果、水噴射の際水泡を巻き込み、レーザの照射が阻害されることが判明したため、ヘッド形状の改良を行った。種々の検討の結果、水泡の巻き込みを防ぐことができ、圧縮残留応力が生成されることが明らかとなった。これにより大型構造物にもレーザピーニングの施工が可能となったため、大型の疲労試験片にレーザピーニングを施し、4点曲げ疲労試験によりレーザピーニング無しの試験片との疲労特性の違いを検討した。疲労特性の検討項目として、疲労き裂発生寿命と疲労き裂進展速度を比較した。その結果、発生寿命はレーザピーニングを施すことにより約1.5倍延びたものの、応力範囲が小さい場合にはその効果が小さい事が分かった。また、進展速度は変わらなかった。さらに、止端部の残留応力を測定したところ、これまで降伏応力程度の大きさであったレーザ移動直角方向の残留応力が半分程度になっていたことが明らかとなった。今後、さらに疲労特性が向上する様、照射条件や照射角度を検討する必要がある。
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鋼構造論文集
巻: Vol.18, No.69 ページ: 61-70