研究概要 |
強風により生じる構造物の被害の低減や,排気ガスの拡散特性把握等の現象の予測精度を飛躍的に向上させるために,独自の構造を持つ風向変動風洞を試作してきた.それを実用化するための大型化に欠かせない,大型化かつ高速で開閉可能なシャッターを開発することを目的として,大型のシャッターを試作した.それを既存の風洞内に設置し,シャッター開閉により生成される気流の特性を測定した.また,大風路で風速の急変を生成できることを利用して,本研究で対象とするような非定常な現象における,模型に作用する空気力の詳細な測定手法の確立を目的とした変動圧力測定も行った. 構造物に作用する空気力特性の詳細な把握には,物体表面の変動圧力分布を測定することが有効である.しかし風向や風速が急変する場合には,物体に作用する圧力測定のための基準圧力を設けることは容易ではない.そこで大型シャッター装置を設置した風洞内において,シャッターを開放または閉塞した瞬間のように大きな圧力変動が生じる際に,立方体模型に作用する圧力を測定し,模型の上方に設置した平板上の,それぞれの圧力測定点の上方において測定される静圧データを基準圧力として用いることで,圧力変動の影響をほぼ取り除いた形で測定できることを確認した. また大型シャッターを風上側に設置し,シャッターを開閉した際に生じる変動風速を測定した.シャッター閉塞時には0.2秒程度で風速の低減が生じるものの,その後で逆流を含む風速変動が数秒間に渡って生じることがわかった.これは,既存の風洞風路内にシャッターを設置しているために生じる現象であると考えられることから,風向変動風洞に用いる際には,こうしたことは生じないと判断している. 本研究により,試作した大型シャッターが,風向変動風洞に適用可能であり,適切な補正を行うことにより作用する変動圧力を測定できることが,概ね確認できたと考えられる.
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