研究概要 |
地震による斜面崩壊によって発生した天然ダムによる河道閉塞を対象として、降雨や上流側の堰止湖の水位上昇に伴う浸透および越流に対する天然ダムの進行性破壊現象の解明を目的とする。天然ダムの堤体材料を用いた室内土質試験や模型実験の結果および実際の被災事例を参照データとして、土骨格・間隙水・間隙空気の三相の運動を扱う多孔質体理論に基づく進行性破壊現象を再現可能な解析手法を開発し、予測手法として確立することを目的とする。 平成22年度は、2008年岩手・宮城内陸地震において発生した河道閉塞を起こした天然ダムについて、まず室内試験や模型実験に用いる土試料を現地で採取した。この土試料を用い、昨年に引き続いて浸食試験を日本大学で実施した。締固めエネルギーが多いほど、浸食に対する抵抗性が高いことがわかった。これは細粒分と礫の噛み合わせが良く、浸食に対する抵抗性が高いからだと考えられる。同じ締固め回数でも水浸により、含水比が高くなった試料の臨界せん断応力の値は小さくなった。これは水浸によって試料が膨張し、乾燥密度が低くなったからだと考えられる。また,平成23年度に実施予定の模型実験や室内土質試験装置の準備を実施した。 内部侵食の構成式を導入した土・水・空気練成解析コードを開発した。この手法を用い、湯ノ倉地区の天然ダムを対象として、堰止湖の水位上昇を再現した浸透解析により天然ダム堤体内での侵食による細粒分の減少を表現した。侵食は浸水開始時が特に顕著であり、小段法尻部から進行していくことが確認された。これにより水みちが形成される可能性がある。
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