地震による斜面崩壊によって発生した天然ダムによる河道閉塞を対象として、降雨や上流側の堰止湖の水位上昇に伴う浸透および越流に対する天然ダムの進行性破壊現象の解明を目的とする。天然ダムの堤体材料を用いた室内土質試験や模型実験の結果および実際の被災事例を参照データとして、土骨格・間隙水・間隙空気の三相の運動を扱う多孔質体理論に基づく進行性破壊現象を再現可能な解析手法を開発し、予測手法として確立することを目的とする。 天然ダムの堤体材料の室内試験を実施した。平成24年度は、内部浸食の基礎的な検討としてガラスビーズを用いて様々な粒度を有する材料の内部浸食特性を調べた。その結果、実験から浸透に対する粒度の安定性を判定するには、Kenneyらの図表が有効であることが確認された。また、限界動水勾配よりも、はるかに小さな動水勾配で局所的なボイリングや供試体内の粒子の移動が観察された。さらに、今回実験に用いた均等係数の大きい試料について、Terzaghiの限界動水勾配より小さい値で破壊が生じた。一方、限界流速では既往の研究と比較してばらつきは見られるが、ほとんど一致する結果となった。このため、均等係数が大きくなると土粒子の粒径に着目した流速による危険性の判定が有効であると言える。 天然ダムの浸透・越流による進行性破壊現象に着目した遠心模型実験を実施した。平成年度は実際の天然ダムの粒度に近いまさ土を用い、自由落下させて堤体模型を作成した。遠心力場において、堰止湖の水位上昇速度や堤体形状、堤体の締固め度を変えた実験を行った。その結果、水位上昇速度が堤体内部の浸透に影響を及ぼしその結果、越流侵食が大きくなることが分かった。堤高の差が堤体内部の浸透に影響を及ぼし、越流侵食の速度に影響を及ぼすことが分かった。既往の研究の安定性評価式と定性的に同じ結果を得ることができた。
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