研究分担者 |
建山 和由 立命館大学, 理工学部, 教授 (10179731)
真下 英人 独立行政法人土木研究所, 基礎道路技術研究グループ, グループ長 (80355875)
岸田 潔 京都大学, 工学研究科, 准教授 (20243066)
小林 俊一 金沢大学, 環境デザイン学系, 助教 (10243065)
西藤 潤 京都大学, 工学研究科, 助教 (40456801)
|
研究概要 |
青函トンネルに代表される海底トンネルでは,施工時および供用時にかかわらず,地下水の浸対策が最大の課題である.そのため,青函トンネルの貫通に最大限貢献した技術は「注入」であった.ところが注入工注が,完成した海底トンネルの力学的安定性に関して大きな課題を残すことはあまり知られていない.それは、透水係数の小さい領域をトンネル周辺に配置すると,海面からの深さに対応する静水圧に近い大きな水圧がトンネルの近くにまで押し寄せることである.注入域の存在しないほぼ一様な透水係数の地盤内に海底トンネルを掘削した場合,トンネル覆工裏側での水圧を0と仮定すると,遠方の静水圧から覆工背面までなめらかな曲線として水圧分布が得られる.そしてトンネル覆工背面に流れ込む湧水は,この地点における水圧(全水頭)の勾配と透水係数の積の大きさで確定する.勾配は小さいが,透水係数が大きいため湧水は多量となる.一方,トンネル周辺に透水係数の小さい注入域を設けると,注入域の外径のところまで海面からの深さに匹敵する静水圧が到達する.極端な場合として,注入域の透水係数を0とすると,ここでは完全な静水圧となる.トンネル背後の領域での動水勾配は大きくなるが透水係数が十分に小さいので湧水は少なくなる.しかしいずれにしても、大きな水圧の領域がトンネルに近づくため,注入は力学的な観点から,覆工の健全性を阻害するおそれがあるのである. 本研究では,注入,トンネル掘削,覆工構築そして完成時から現状までの各ステージにおいて,海底トンネル周辺地盤に生じている現象の解明し,併せて数値解析(数値実験)による現象のモデル化を行う.これらの検討を通じ,海底トンネルの健全度の評価法の確立および健全度に対する対策方法の提案を目指す.平成21年度は,海底トンネルの力学モデルの確立を行うとともに浸透力の影響を考慮する簡便な模型実験の設計を行った.
|