研究概要 |
新規道路を整備する際,盛土による地域分断を好まないため,地域に配慮し高架橋で施工することがある.盛土に比べ高架橋は,建設や維持管理の上で高価なものである.本研究で検討を行う構造物は,高架橋や盛土の代替となるものである.構造は,多連式アーチカルバートを複数ユニット導入し,その周囲を盛土構造とするものであり,盛土とアルバートのハイブリット構造である.技術的課題は,不同沈下とその対策,適切な構造物間隔の設定,耐震性の検討,景観設計の検討である. 今年度は,耐震性の検討を模型実験及び数値解析にて行った.実験と解析の結果から 1) 本体構造にヒンジ機能を有する多分割式のプレキャストアーチカルバートでは,ヒンジの位置や構造によって,アーチカルバートに作用する地震時の断面力が大きく異なる. 2) 実験と解析の結果より,ユニット間隔を狭くすることによって,地盤の応答加速度やせん断ひずみは若干大きくなることが確認された.しかしながら,アーチカルバートに発生する曲げモーメントに関しては,ユニット間隔がアーチカルバートの高さの1/4までであれば,ここで行った実験条件ではユニット間隔による影響は顕著でないことが明らかになった. さらに,仮想地点での景観設計を行い,多連アーチカルバートは,従来の盛土構造に比べ空間の分断が少なく,デザインにより景観とも調和しやすい構造である,という結論を得た.ただし,個別の対象物に対してだけでなく,空間全体に対して前後の道路や関連施設全体に対して,適切な景観設計が必要である.
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