研究概要 |
大気-海洋-波浪結合モデルと本研究において開発した軸対称渦位モデルを組み合わせ,明治以降我が国最大の台風災害をもたらした伊勢湾台風が温暖化時に来襲する場合の再現シミュレーションを行った.具体的には,21世紀末(2099年)9月の大気・海洋場をIPCCの温暖化シナリオSRES AlBによって渦位空間上で与え,そこに伊勢湾台風級台風(伊勢湾台風がそうであったように所定の大気・海洋場において発達できる上限にほぼ到達する台風)の軸対称渦位モデルを埋め込む初期設定を行った.さらに,それを実空間に逆変換することにより,AlBシナリオに基づく2099年9月の大気・海洋場に伊勢湾台風級台風が発生した時の初期化を行い,40ケースの異なる進路で紀伊半島に上陸させ,これらによる高潮や高波,風速,降水量の計算を行った.その結果,これらの台風の上陸時の中心気圧は約900~910hPaとなり,伊勢湾上での最大風速は50m/sを超え,名古屋港で発生する高潮の最大潮位偏差は伊勢湾台風(1959年)による高潮の潮位偏差3.55mの2倍近い6.5mに達する可能性のあることがわかった.この結果に対する社会的反響は大きく,中日新聞の一面に大きく報道されたほか,NHK総合テレビの90分特番やおはよう日本,東海テレビなどでも紹介され,社会の関心に応えた研究として高く評価された.このような温暖化時の台風強大化の予測精度向上させるため,台風下海面境界層のレイノルズ応力のモデル化を風洞水槽実験結果に基づくバースト層モデルの活用によって行った.また,上陸時の台風強度の予測精度を向上させるため,強度減衰率に対する感度実験を行い,風の鉛直シアーが最強因子であることを見出した.
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