研究概要 |
1.研究I「都市域浸水・減災対策検討シミュレータ」の開発 (1)河道形状(直線,蛇行),越流状態(完全越流,もぐり越流)および破堤条件(破堤幅,破堤箇所)を変化させた破堤氾濫流の模型実験を実施し,この結果に基づき,「高精度平面2次元自由表面流モデル」がこれらの諸条件や状態にかかわらず,破堤氾濫の全体的な流況と氾濫流量を最大で±10%の誤差の範囲で予測可能なことが確認された。(2)「都市域内水・外水複合氾濫解析モデル」と「分布型流出・平面2次元洪水追跡モデル」より構成される「統合型氾濫解析モデル」に,「レーザー・プロファイラーによる高精度な地盤高・市街構造データ作成」「地理情報システム(GIS)による流域情報の一元管理」と「浸水による経済被害評価(直接被害)モデル」を組み込み,「浸水減災シミュレータ」を構築した。 2.研究II「樹林帯」の減災機能の工学的な評価とその整備・保全法の開発 (1)堤防背面を盛土し,裏法面に樹林帯を設けた場合の樹林帯整備の計画段階において必要となる,越流流量や越流水深を簡便に算定できる「樹林帯・堤体形状・堤内地盤高を考慮した越流流量式」を開発した。また,堤防を横越流する場合を対象として,河道に沿った縦横断的な平面的な樹林帯整備のあり方の検討や整備計画の手段として,上記した「高精度平面2次元自由表面流モデル」に樹林帯・水防林の取り扱いを考慮したツールを開発し,その有用性を実証した。(2)同ツールを用いて、家屋群等に水防林を設けた場合に期待される流勢緩和,浸水深の低下,流向制御などの機能について評価・検討した。 3.研究III「浸水減災シミュレータ」の実流域への適用と減災効果の総合的な評価・検討,及び減災法の提案 (1)「浸水減災シミュレータ」を用いて,2003年7月九州豪雨災害以降,飯塚市を中心に整備されてきた各種治水施設が浸水プロセスに及ぼす影響やその被害軽減効果について検討し,被害額の推定や,都市域の治水施設・治水システムによる総合的な被害額軽減効果を検討できることなどを確認した。また,仮想的な降雨外力に対する浸水シミュレーションより,遠賀川の-次支川のK川の氾濫と,それに伴うB地点で内水氾濫の可能性など,飯塚市の治水システムの弱点を明らかにした。(2)「分布型流出解析・平面2次元洪水氾濫解析モデル」を遠賀川流域に適用し,2003,2009,2010年に発生した複数の豪雨を用いて同モデルの予測精度の検証と河川改修による水位低減効果を検討し,本川および支川の水位ハイドログラフの実測結果,水位流量曲線を十分な精度で再現できることや,河道掘削などの河道改修により,計画基準点では2003年と同程度の流量で1.5mの水位低下が見込めることなどの改修効果を的確に捉えることができることを確認した。
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