研究概要 |
本研究では,沿岸域・陸棚海域の底層環境の実態を明らかにするために,懸濁物質を中心とした多角的な計測を可能とする境界層計測プラットホームを開発し,(1)海底境界層内の物理構造と懸濁物質の微視的・巨視的動態,(2)懸濁物質の起源・組成・変性特性を把握した上で,これに基づいた沿岸域底層-懸濁物質動態モデル構築を目的としている.平成21年度は,まず観測プラットホーム開発について,諸外国を含め既往の関連機器のレビューを行った上で具体的な機器の諸元や性能に関する基本設計を行い,塩分水温計,蛍光光度濁度計,現地用レーザー粒度計,光学式硝酸塩センター,DO計等を搭載可能で,海底から100m程度の範囲を鉛直方向に定期的に自動降昇する境界層プラットホームを制作した.次に,懸濁物質の実態把握については,懸濁物質の変性特性把握のための予備現地調査を2009年9月に長崎県五島列島沖海域で実施し,セディメントトラップにより捕集された沈降粒子を,ボトル内で培養しその分解過程を調べるための実験系の検討を行なった.その結果,沈降粒子が物理的に破壊・凝集せず,現場環境に近い状態で培養可能な方法(円状に成形した透明塩ビのパイプをボトルとし,それをローラー上で回転させながら培養)を考案し,これを用いて対馬沖で採取されたトラップ試料の培養実験を実施した.さらに,懸濁物質の微視的動態を計測するための現地PIV画像解析システムの開発については,画像処理及び画像認識のためのオープンソースライブラリOpenCVに基づいた基本解析プログラムを試作し,実際に海中で撮影されたビデオ画像で懸濁物質の追跡を行うことで基本性能を確認した.また,現場海域でステレオ可視化画像を実際に撮影するためハイビジョンビデオカメラを海中画像計測装置FISCHOMに搭載するためのステレオカメラモジュールを制作した.
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