研究概要 |
本研究では,沿岸域・陸棚海域の底層環境の実態を明らかにするために,(1)懸濁物質を中心とした多角的な計測を可能とする観測プラットホームの開発,(2)懸濁物質の動態計測手法の検討,(3)懸濁物質の起源・組成・変性特性の実態把握,(4)沿岸域底層を中心とした流動及び物質循環モデルの構築を主な目的としている.平成23年度は,沿岸域底層環境の実態計測を行うために,仙台湾を対象として観測プラットホームと一般的な係留系を併用した現地観測を成層期にあたる6月~9月に実施した.その結果から,底層環境の特徴として,i)クロロフィルaは底層で極大層を形成し10~20日スケールで変動していること,ii)底層濁度変動には観測期間中に通過した台風の影響が大きく,底層流による底面せん断力以外に波浪の効果が重要であること,iii)底層DOの低下には,懸濁物質が集積される外海進入水の底層フロント部(懸濁物質が修正)の挙動が重要であることなどを明らかにした.懸濁物質組成解析については,仙台湾で得られた懸濁態有機物の炭素・窒素安定同位体比の結果を東京湾で得られたデータとの比較等を通じて精査し、その起源の特徴について解析を進めた.懸濁物質の微視的動態を計測するための現地PIV画像解析システムの開発に関しては実用化へ向けた室内実験を行った.実験では,水槽に投入したポリスチレン粒子をステレオカメラモジュールで撮影し,得られたステレオ画像から粒子を抽出して,カルマンフィルターとx^2検定を組み合わせた粒子の追跡を左右の画像空間および3次元空間に適用したところ,粒子の流動を十分な精度で3次元計測することが可能となった.また,陸棚海域を含む沿岸域の底層環境変動を表現する数値モデルについては,流動モデルと浮遊系底生系結合型モデルを組み合わせた底層環境モデルの構築を行い,これまで水産工学研究所が実施してきた鹿島灘の海洋観測結果と比較することでモデルの性能検証を行った.
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